嘆きのピエタ ヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞作。「いびつ」な人間心理の極地を描く

【あらすじ】

借金の取り立てをし、天涯孤独に生きてきた男、イ・ガンド。彼は返済期限を過ぎた貸付先には容赦のない暴力をふるい、是が非でも回収していた。そんなある日、彼の前に「私はアナタの母親である」と名乗る謎の女が現れる。信じることができないガンドは彼女のことを追い返すが、女はしつこく後を追ってくる。やがてガンドの家にも上がり込み、身の回りの世話をするようになると、ガンドは彼女のことを本当の母親のように思い始めるのだが…。

【見どころ】

ピエタとはイタリア語で「哀れみ」「慈悲」などを意味し、死んで十字架から降ろされたキリストを抱く聖母マリアの彫刻や絵の事を指す。だが今作はそんな意味の枠をはるかに超えて、過剰に「いびつ」な人間心理を描き、何とも不気味で後味が悪い。

謎の女を演じるチョ・ミンスがとにかく怖い。不気味で気持ち悪いとも言える。男に罵声を浴びせられたり、暴力を振るわれても、口数少ないままひたすら尽くしていく。曇った表情で彼の部屋を掃除して、食事を作り、さらには性処理まで手伝うのだ。一体なぜそんなことをするのか。観る者は訳が分からないまま、謎の女の行動に付き合わされることになる。

本当の母親であろうとなかろうと理解に苦しむ彼女の行動。そして物語の後半、男に奉仕する理由がようやく判明すると、その屈折した彼女の心理に言葉を失くすほどの衝撃を受けるだろう。

まさに鬼才キム・ギドク監督作品。鑑賞後、何ともいえない消化不良な感覚がまとわりついてくる1本だ。

  • 【監督】キム・ギドク
  • 【出演】チョ・ミンス/イ・ジョンジン/ウ・ギホン
  • 【日本公開】2013年
  • 【原題】PIETA
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