コインロッカーの女 大傑作。残酷な裏社会で生きる少女の切なすぎる恋

【あらすじ】

イリョンは生まれた直後に駅構内のコインロッカーに捨てられた。
その後、裏社会を仕切る一家に拾われた彼女は、組織のドンである通称「母さん」に育てられ、この世界で生き抜く術を教わっていく。
借金の取り立てから臓器売買、殺人まで実行する母さんは、指示を遂行できない構成員は殺すことも厭わない。誰もが恐れる人物だった。イリョンはそんな母さんを恐れながらも尊敬し、少女でありながらも厳しい借金の取り立てを実行していく。そして母さんからの信頼も得るようになっていった。
だがある日、新たに貸付金を回収しに行ったところ、取り立てる相手が優しい青年で、イリョンは不覚にも恋心を抱いてしまい…。

【見どころ】

ノワール作品として見ごたえ抜群の今作。

誰からも愛されたことのない少女の初めての恋。それがきっかけとなって破滅に向かっていくスリリングな展開。最初から最後まで観る者を全く飽きさせない。

主人公、イリョンを演じるのはキム・ゴウン。決して美人ではないのだが、日本の若手女優にはない凛とした強さを感じさせる。彼女だからこの役がピッタリはまった印象だ。
借金の取り立て相手が大男でも、灰皿で殴り倒してきっちりと回収していく。その一歩も引かない姿は裏社会で生きてきた人間の雰囲気をしっかりとまとっている。
一方でどこか可愛らしい不思議な魅力も持つ彼女。「母さん」の指令は必ず実行する鉄の女でありながら、恋心を抱いてしまった優しい青年への過酷な取り立てに躊躇してしまい、あっという間に窮地に立たされていく。

掟を破れば「死」あるのみ。やられたらやり返す。ここから一家の残酷なルールが身内に向かって動き出していく。これぞ裏社会、といった展開がたまらなく良い。

また一家のメンバーたちそれぞれのキャラクターが立っているところも良い。
「母さん」を演じるのは数々のテレビドラマや映画に出演するキム・ヘス。常にタバコを吹かしながら一家のメンバーに厳しい指示を出していく姿は裏社会のドンの貫録あり。また日本の個性派俳優・荒川良々のような風貌で、知的障害を持つ弟。「母さんに言われたから」と言って躊躇なく死体を小分けにするシーンには背筋が凍る。
そして寡黙ながら圧倒的な強さを持つ兄。ドラッグに溺れ、すぐに問題を起こす妹。

言葉には出さないが「母さん」も含めて、皆がお互いのことを思いやっている関係性を感じさせる演出が良い。それであるからこそ破滅に向かってしまう切なさが一層際立っていく。

キム・ゴウンという女優が好きになること請け合い。絶対に観て損のない1本だ。

  • 【監督】ハン・ジュニ
  • 【出演】キム・ゴウン/キム・ヘス/オム・テグ/パク・ボゴム/コ・ギョンピョ/イ・スギョン
  • 【日本公開】2016年
  • 【原題】COIN LOCKER GIRL
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